6月16日に開催された政府の「未来投資会議」で、首相は「ウィズ・コロナ、ポスト・コロナ時代の働き方として、兼業など多様な働き方への期待がさらに高まっています」として、兼業先での労働時間の把握について新たなルール整備に取り組むことを表明しました。
これまで兼業・副業について必ずしも世間の関心が高いと言えなかったのですが、今回の動きは具体的であり、要注目です。
今回の未来投資会議の中身に入るまえに、昨年5~6月の規制改革推進会議の動きを振り返っておきましょう。今から1年前、規制改革推進会議は5次答申の取りまとめにあたり、兼業・副業についての規制を緩和することを盛り込もうとしました。現行の労基法の労働時間の取扱いにおいて、兼業・副業で事業場(勤務先)を異にする場合には労基法の規定を通算することとしていますが、これを見直すべしというものです。例えば、本業の企業A社で6時間働き、引き続き兼業先であるB社で6時間働こうとする場合、労働時間が通算されるとB事業場では通算8時間を超える4時間分が割増賃金の対象になってしまいますので、これでは兼業・副業が進まないではないかというわけです。そこで、規制改革会議は、通算を見直し、割増賃金を払わなくてもいいようにすることを求めたかったわけです。しかし、労使と学識者からなる厚生労働省の研究会や労働政策審議会等では、労働者の健康確保等のためには通算した労働時間の把握は欠かせないと考えており、この点は規制改革会議側も認めざるを得ませんでした。こうして、1年前の規制改革会議の5次答申では、この問題について明示的な記述は避け、さらに検討を進めることになっていました。
さて、こうして出てきた今回の未来投資会議における兼業・副業の促進策の提案です。
第1の柱は、労働者の自己申告制の導入です。この際、兼業先(B社)での超過労働によって上限時間を超過したとしても、本業の企業(A社)は責任を問われないことが提案されています。
第2の柱は、本業の企業(A社)が兼業を認める場合、次の①②の条件を付し、A社が兼業影響を受けない形で、従来どおりの労働時間管理で足りるようにすることが提案されています。
①兼業を希望する労働者について、A社における所定の労働時間を前提に、通算して法定労働時間又は上限規制の範囲内となるよう、B社での労働時間を設定すること。
②A社において所定の労働時間を超えて労働をさせる必要がある場合には、あらかじめ労働者を通じて、必要に応じて(規制の範囲内におさまるよう)、B社での労働時間を短縮させることができるものとすること。
今回の提案が注目すべきである理由の一つは、労働者の健康確保等のためには通算した労働時間の把握は欠かせないという点を踏まえるとともに、これまで本業の企業が懸念していた副業先での労働時間管理の責任まで問われたくないという点についても本業の企業の責任を限定する配慮がなされており、今回の労働時間管理のシステムが現実的であることです。
注目すべきもう一つの理由は、これまでの時代は長期の雇用の安定を前提として、勤労者が一つの企業と、帰属・奉公のような形で結びついていましたが、ウィズ・コロナ、ポスト・コロナの時代になるとこれが変わってくると考えられ、もっと短期の貢献・利益の関係を前提として、勤労者が複数の企業と複数のキャリアで結びつくケースが出てくると思われるからです。
兼業・副業を促進しようという今回の動きを実現するためには、法令上・予算上の措置も必要になるかもしれませんので、年内を目途に具体化の道筋を探っていくことになりそうです。
