いよいよ同一労働同一賃金に関する最高裁判所の新しい判断が示されることとなりました。10月13日にメトロコマース事件と大阪医科薬科大学事件が、同15日に日本郵便に関する2つの事件の判決が示されるとされています。
平成30年6月の最高裁のハマキョウレックス事件・長澤運輸事件の二判決は、「①職務の内容、②職務と配置の変更の範囲、③その他の事情の3つの考慮要素に基づき、待遇ごとに判断する」という方針を鮮明にする重要なものでしたが、どちらもトラック運転手を対象とする事件であったため、比較対象の範囲についての言及が少なく、待遇についても住宅手当、食事手当、精勤手当等ほんの一部の待遇についてしか判断が示されていませんでした。
今回の4事件は、いろいろな職種になりますので、比較対象の範囲の論点整理が出てきますし、待遇の種類についても、基本給、退職金、賞与、その他の二判決で対象にならなかった手当類も判断の俎上に上がってきますので、要注目の判決になります。
判決が示されれば新聞等で報道されると思いますが、ここでは一足先にどんな事件で、どんな見どころがあるのか、予習をしておきたいと思います。
メトロコマース事件
東京メトロ100%子会社の地下鉄売店で働く非正規販売員と同社の正社員との格差が問題とされた事件です。訴えた労働者は契約社員Bに位置付けられ、正社員との間に本給、賞与、住宅手当、退職金等に差がありました。社員は全体で800人で、売店業務に従事する正社員(会社再編時に他社から転籍してきた者等)が18人、職種限定社員(平成28年に旧契約社員Aから職種限定の正社員に変更)が14名、そして契約社員Bが78名となっています。
この事件で注目される点の1つは、比較対象の範囲です。地裁は、正社員全てと契約社員Bを比較し、職務等に大きな相違があるという前提で、早出残業手当以外の労働者側の請求を棄却していました。しかし、高裁では、裁判所の判断は不合理と主張する者の主張を吟味するとの立場で、比較対象の範囲は不合理性と主張する側の主張を考慮して検討することとして、売店業務に従事する正社員(18人)と契約社員Bとを比較したうえで、住宅手当、褒賞及び退職金についても不合理性を認めました。
特に、この事件で注目されているのが退職金です。平成28年の職種限定正社員制度の創設の際、旧契約社員Aに対して無期雇用とするとともに勤続年数に応じた退職金制度を設けたことから、同社の退職金制度には功労報償的性格があると考えられ、そうであれば契約社員Bとして長期に勤務した者にも少なくとも正社員の4分の1は支給されるべきとしました。
大阪医科薬科大学事件
大学の教室事務のアルバイト職員(3年勤務)と正職員の格差が問題とされた事件です。
この事件でも比較対象の範囲が問題になりましたが、高裁は正社員全体と比較すべきとしました。そして、先のメトロコマース事件とは異なって、比較対象者の範囲は客観的に定まるもので不合理と主張する側が選択できるようなものではないとしました。そのうえで、この事件で、高裁は正職員とアルバイト職員では職務、責任、異動可能性等が異なるとし、本給の相違は不合理ではないとしました。
しかし、賞与については、大学における賞与の支給額の決定方法、契約職員にも80%支給していること等を踏まえ、大学の賞与には算定期間に在籍していたことそれ自体に対する対価としての性質があるとし、そうであればアルバイト職員に全く支給しないということに合理的理由が見いだせないので、正社員の60%の限度で支給すべきとしました。
日本郵便(東京)事件、同(大阪)事件
郵便局採用の非正規の配達担当社員と正社員の格差が問題とされた事件で、東京と大阪の2つの事件があります。
東京でも大阪でも比較対象の範囲は問題になりました。日本郵便には「総合職」と並んで「一般職」があり、「一般職」は制度改正により「新地域基幹職」と「新一般職」に分けられました。労働者側は、そのうちの配達業務を行っている人だけを比較対象にすべきと主張しましたが、東京・大阪いずれの裁判所でも、比較対象を「旧一般職」「新一般職」とすることとし、そのうえで労働者側が不合理な待遇と主張する諸手当について相違の合理・不合理性を検討しました。
諸手当は数が多く、かつ、結論も複雑なので詳述は避けますが、ここでは大阪の事件で高裁が示した注目される判断を紹介します。
1つは、扶養手当です。地裁では扶養手当の支給・不支給の相違を不合理としましたが、高裁は、扶養手当は長期雇用システムの下での生活費の増減に対応する趣旨のものであり、この趣旨は非正規職員には当てはまらないとして、扶養手当に係る待遇の相違を不合理ではないとしました。
2つ目は、年末年始勤務手当についてです。地裁では同手当の相違を不合理としましたが、高裁は忙しい期間だけ短期で働いてもらう契約社員に年末年始勤務手当が支給されないこと自体は不合理ではないとしつつ、通算5年以上継続勤務している契約社員にまで支払わないのは不合理であると、独自の判断基準を示しました。
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